高田晴美
Abstract
本研究では、次世代の高効率X線望遠鏡の開発を目的として、 レプリカ法を用いた、 薄板X線反射鏡の製作・評価システムの開発を行った。
X線反射領域においては、光学望遠鏡のような 直入射型の光学系は実用的な反射率を得ることができず、 鏡面からわずかな角度(<1o) でX線が入射する全反射を利用した 斜入射光学系を用いる。 斜入射光学系は反射鏡面積に対して有効な受光面積が 非常に小さいため、有効面積を高めるためには 鏡の基板を 薄くし、同心円状に多数枚並べた多重薄板型が有効である。 一方、十分な結像性能を得るためには、 反射鏡基板の形状誤差を低減する必要が有り、 一般的には基板の研磨等を行うが、 薄板基板においてはこれは非常に困難である。 ここで有効なのがレプリカ法である。
レプリカ法とは、平滑なガラスなどの母型に鏡面となる 物質(一般には金)を成膜し、 エポキシ(接着剤)を用いてその膜 と目的の基板を接着し、剥離剤となる金を母型から剥離することで 基板上に写しとる方法である。 この方法によって、薄い基板上にでも平滑な鏡面を創ることができる。
我々のシステムでは、これまでは、望遠鏡には適用できない、小型で形状精度の悪い レプリカ反射鏡しか製作することは出来なかった。 本研究では、実際に望遠鏡として実用化できるレプリカ鏡を製作するために、 光学系の設計、それに基づいた製作システム及び評価システムの開発を行い、 レプリカ鏡の製作条件を確立した。
製作したレプリカ鏡について 性能を評価したところ、 反射率測定などからは、 反射鏡の表面粗さは 4Å 〜 5Å と、 薄板型反射鏡としては世界最高レベルまで達している ことが分かった。 将来的には、もっと粗さの小さい母型を使い、 粗さ 3Å 以下の反射鏡を製作することが望まれる。
一方、結像性能は、1枚の反射鏡で1分〜2分角 であった。結像性能を決める重要な要素である、 反射鏡自体のマクロの形状精度が、エポキシの厚みの不均一性 、基板の強度などの要因で、でていないためであろう。
今後は、基板に強度の大きいものを使用する など、製作工程や製作条件に対してさらに改良を進め、 更に高反射率を持ち、結像性能が30秒角以下 という高性能な望遠鏡を製作することが 課題である。
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