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New 2018- |
・重力波観測 |
・次世代X線衛星、MeVガンマ線観測、そして雷雲ガンマ線 |
(これら2個の研究の詳細は、上記のリンクへ!)
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X線は1895年ドイツの物理学者レントゲンによって発見されました。
我々がいつも見ている可視光と同じく 光の一種ですが、可視光に比べ約1000倍もの高いエネルギーをもった光です。そのため、物質を透過する力をもっておりレントゲン写真を撮るときにも使用されます。電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線などはすべて光の一種であり、エネルギーが高いか低いかによって名前が変わっていきます。 |
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夜、空を見上げると青白い星や赤い星、天の川などたくさんの星が見えます。これらは可視光での星の姿です。宇宙には銀河やブラックホール、太陽のような恒星などがあり、これらの天体は上で述べたいろいろなエネルギーの光で輝いています。
では宇宙から来るX線を地上で見る(検出する)ことができるのか、というとそれはできません。地球には大気の層が存在しているため、宇宙からくるX線はそこで遮られてしまいます。可視光は地上まで届くのに、それよりもエネルギーの高いX線は大気で遮られてしまうというと不思議に感じてしまいます。これは可視光とX線との吸収のされ方の違いが原因です。そのためX線を観測するためには大気の外側までいかなければいけません。 |
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X線を観測するには上で述べたように大気の外側(高度50km〜)に行く必要があります。そのため人工衛星やロケット、気球などにX線望遠鏡と検出器を載せて観測することになります。
X線は非常にエネルギーが高い光であるため、密度の高い物質(金やプラチナなど)をつけた反射鏡にすれすれの角度(0.1〜0.5°:下図)で入射させることによって反射させ、検出器面上に光を集め像を結んでいます。 |
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前のページでも少し触れましたが、X線という光は非常にエネルギーが強いため効率良く反射させるのはとても難しいです。そこで我々の研究室では全反射とブラッグ反射という反射の性質を利用してX線を反射させています。 |
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X線は原子と直接相互作用(衝突)するために電子密度の高い(電子が多い)金やプラチナが反射面に用いられます。全反射とは屈折率が大きい物質から屈折率が小さい物質へ光が入射する時に起きる現象で、入射してきた光を90%以上反射します。
X線領域では物質の屈折率は1より小さくなるため、真空中(屈折率=1)からくるX線に対しては全反射をおこします。例えば反射面にプラチナを用いた鏡に対しては、X線の入射角度が約0.5°以下の場合に全反射をおこします。この性質を利用したものが全反射鏡で、実際に日本で第4番目のX線天文衛星「あすか」にも金の全反射鏡を使った望遠鏡が搭載されています。 |
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全反射を起こす入射角度よりも大きな角度でX線がはいってくると、X線は物質内部に侵入するようになります。このとき物質内部に周期的な層構造が存在していると、各層で反射されたX線がある角度において干渉し強め合うということが起こります。これがブラッグ反射です。ブラッグ反射を利用するため人工的に周期長を持たせた反射鏡が多層膜です。(下図) |
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多層膜スーパーミラーと硬X線望遠鏡について(詳しい説明) |
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全反射を利用した 斜入射光学系は10keVが実用限界であり、硬X線領域(10〜100keV)で集光・結像が可能なX線望遠鏡の開発には技術的なブレイクスルーが望まれている。我々の研究室では、多層膜の高性能化、レプリカ鏡の製作、湾曲した薄板レプリカ鏡への均一な多層膜の成膜と大量生産法の確立、鏡面基板の加工と評価、X線光学特性評価を主要な課題として、X線望遠鏡の開発を進めてきた。その結果、多層膜スーパーミラー硬X線望鏡が初めて試作され、その結像性能を評価することによって、気球観測が現実のものとなり、更に将来のX線天文衛星搭載に向けて大きく展望が開かれた。 |
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多層膜は全反射を用いた反射鏡と比較して、高いエネルギーのX線まで反射することが可能だが、ブラッグ条件によって制限されるため広いエネルギー帯域で高い反射率を得ることが困難となる。そこで、X線の侵入深さを考慮して周期長の異なる多層膜を積み重ねた多層膜スーパーミラー有効となる。特に
硬X線領域では光電吸収が効かなくなり、エネルギーが高くなるに従って侵入深さが大きくなる。これを反射面に用いれば広帯域・高効率X線望遠鏡が実現できる。下図に全反射鏡(プラチナ)及び多層膜反射鏡(プラチナ/炭素、周期長=40Å、積層数=20)と比較して、多層膜スーパーミラーの反射率を示す。 |
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我々は、世界で初めての20〜40keVの硬X線に対する集光・撮像観測を行なうため、NASAと共同で気球実験InFOCμSを推進している。この実験は来年8月に行なう予定であり、気球には我々の実験室で製作する多層膜スーパーミラーを用いた硬X線望遠鏡を搭載する。現在までに用いられているX線望遠鏡は、ASCAをはじめ重元素薄膜の全反射を利用したもので、10keV以上の硬X線に対して実用的な有効面積を持たせることは不可能であった。硬X線領域における集光撮像観測は、コリメータを用いた観測に比べシグナル/ノイズ比を飛躍的に向上させ、暗いX線源の検出及び硬X線源の空間分布を解明することが可能になる。今回の気球実験で用いる硬X線の設計パラメータは口径400mm、焦点距離8mで、20〜40keV領域において角分解能2分角、有効面積100cm2を目標としている。 |
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