名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
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銀河団の質量とバリオンフラクション

原田晃浩

Abstract

銀河団は、宇宙の階層構造において、重力的に束縛された最も大きな天体であり、直径 数Mpcの中に、数百個から数千個の銀河を含んでいる。また、銀河団は非常に明るい X線源であり、内部には、高温107〜 108K、低密度10-2〜10-3atoms/cc、のプラズマが満ちている。銀河の速度分散の観測から、銀河を束縛しておくため には、可視光で見えている物質の約10倍の質量が必要であることが分かり、ダークマター の存在が示唆されている。ダークマターは銀河団内の物質の約90%を占めている ので銀河団の形成や進化に多大な影響を及ぼしている。したがって銀河団の力学を議論す るためにはダークマターの情報が不可欠である。また銀河団は大きな規模で物質が集まっ ているので、銀河団内のバリオンとダークマターの量は宇宙全体の値を代表してい ると考えられる。それを用い、直接的に宇宙論パラメータに制限をつけることができる 。

本研究では、銀河団のX線観測から得られる重力質量とガスの質量からダークマターの 量と分布について議論した。 X線天文衛星あすかで観測された45個の銀河団を同一の手法で解析した。あすかの望遠 鏡を通して得られたイメージは、望遠鏡の結像性能のため、実際のイメージより広がっ て見える。この広がったイメージをLucy法を用いて元のイメージを再現した。従来は得 られたX線輝度分布全体に単一モデル(β-model)を当てはめ、ガス質量と重力質量 を求めていたが、ここではモデル依存性を減らすため、X線輝度分布全体に単一モデル を当てはめることはせず、全体を区分けして各区間ごとにモデルを当てはめ、より精密 に観測データに合わせて、銀河団の質量を求めた。

その結果ほとんどの銀河団は半径方向に似たような重力質量分布をしていることが分か った。解析した最大半径(1〜 2Mpc)以内の重力質量は5×1014〜 2×1015Moの範囲に分布している。ガスの質量も各銀河団で類似した分 布をしていて3×1013〜 3×1014Moである。重力質量とガ スの質量の比、ガスフラクションが銀河団の中心から外側に向かって増加している ことが分かった。このことは中心部ほどダークマターが集中していることを示している 。ガスフラクションの値から重力質量におけるバリオン質量の割合であるバリオンフラク ションの下限値を推測することができ、半径1.5Mpcのところで約0.2である。バリオン量 としてビッグバン初期の元素合成理論から得られるものを用いると、密度パラメータに Ω0 < 0.4という制限をつけることができた。

 
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