後藤 有史
Abstract
我々は、20〜40keVの硬X線領域での集光撮像観測を目指しており、 そのための硬X線望遠鏡の開発を行ってきた。 その開発も実用化の段階に入り、2001年6月には、 NASA/Goddard Space Flight Center との共同で、超新星残骸、活動銀河核、 銀河団等を観測対象とした世界初の硬X線撮像観測気球実験 ``InFOCμS''(International Focusing Optics Collaboration for μCrab Sensitivity)を行なう。 その気球実験に向けた反射鏡の大量生産も2001年3月には全てが終了する。
この望遠鏡は、Wolter-I型を円錐近似した多重薄板型で、 2000枚の反射鏡を使用し、 口径40cm、焦点距離8m、入射角は外側に向かって0.105°〜0.356°である。 また反射面には Pt/C多層膜スーパーミラーを採用している。 多層膜とは、重元素(Pt)と軽元素(C)を 交互に一定周期長で積層した光学素子で、Bragg条件を満たすエネルギーで 高い反射率を実現するものである。 多層膜スーパーミラーでは、この多層膜の周期長を基板に向かって 減少するように変化させながら積層することで、 さらに広いエネルギー領域での高反射率を実現する。 我々はこのスーパーミラーを、周期長30Å〜90Å、 積層数25層〜60層で設計し、 有効面積20keV〜40keVで100cm、角分解能1.5分を目指している。
反射鏡では、膜厚を均一にすること、界面の粗さを小さくすることが重要であ る。現在、700枚のスーパーミラーが完成しているが、 20keV〜40keVで40%〜50%の反射率を実現、膜厚の設計値からのずれは、〜± 5%に抑えられ、界面の粗さは、〜4.0Åである。 また、これらの反射鏡を実際に望遠鏡に組み込み、望遠鏡としての性能評価を 行なった。生産した反射鏡をハウジングに組み込み、焦点面に PSPC を置いて その像を測定した。 本論文では、名古屋大学X線ビームラインを用いて行なわれた``InFOCμS'' 搭 載用硬X線望遠鏡の性能に関する報告をする。
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