名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
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天体までの距離の測り方
年周視差を測る

地球が太陽の周りを公転しているため、夏と冬とでは同じ星でも見える方向に 角度差を生じる。これを年周視差と呼ぶ。この年周視差を測ることによって、 原理としては三角測量と全く同じ方法で星までの距離を求めることが出来る。 この方法は単に幾何学的に距離を求める、もっとも信頼できる直接的な距離測 定法である。 しかし、遠いものほど年周視差が小さくなるため測定が難しくなり、 だいたい約100光年(300パーセク)以内の星にしか適用できない。

よく天文関係で距離の単位に使われているパーセク(pc)は、視差を基準に決め られている。太陽と地球の平均距離(1 天文単位)だけ離れた2点から見た視差 が1秒となる距離が 1 pc (3 × 1018 cm, 約3光年) である。

主系列星の色--光度関係

同じ明るさの(絶対光度=単位時間に放射するエネルギーが同じ)星でも、距離 が遠くなると見かけの明るさは暗くなる。星の見かけの明るさは星までの距離 の3乗に反比例するため、その星までの距離が分かっていれば、星の見かけの 明るさから星の絶対光度を求める事ができる。 また、その逆に星の絶対光度を知っていれば、見かけの明るさを測ることで距 離を求めることが出来る。

しかし、観測できるのは見かけの明るさで、絶対光度は距離が分からなければ 求められない。そこで距離を決める前に先ず最初に星の絶対光度を知る事が必 要となる。そこで、先に述べた年周視差が役にたつ。年周視差で距離を測るこ とのできる星があれば、その見かけの明るさから絶対光度を求めることができ る。

太陽などの仲間である主系列星には、その星の色が分かるとその星の絶対光度 (単位時間あたりの放射エネルギー)が決まるという、非常によい経験則が知ら れている(H-R図というものを調べて見よう)。 この経験則を使うと、見かけの明るさと星の色から求められる絶対光度を 比較することによって距離を求める事ができる。 この方法で測ることのできる距離はだいたい3000光年以内である。しかし、星 の光が星間空間で吸収を受ける事によって(そして、光の波長によって吸収さ れる量が異なるために)、見かけの星の色が実際の色から変わってしまうとい う問題があるため、現在はあまり広く使われていない(太陽が地平線近くにあ る時と高いところにある時とでは太陽の色が違って見えるのと同じである)。

変光星の周期--光度関係

変光星には、明るさと明るさの変化の周期の間に関係があるものが存在する。 そのなかでも最も有名なものが、セファイド型変光星である。このセファイド 型変光星は正確な周期で明るさが変化し、その周期が長いものほど明るいとい う性質(光度--周期関係)を持っている。従って、遠い銀河の中にあるセファイ ド型変光星を見つけることが出来れば、その変光周期から絶対光度をもとめ、 見かけの明るさと比較することで、その銀河までの距離が測定できる。

%実はセファイド型変光星には同じ周期でも絶対光度が大きいものと小さいもの %の2種類のタイプがある。ハッブルが最初にハッブル定数を求めた時に利用し %た周期--光度関係は暗いセファイドから得られたものであったが、観測したセ %ファイドは明るいセファイドだった。この食い違いがハッブルが求めた、あの %526 km/sec/Mpc というべらぼうに大きな値を生んだ最も大きな原因であった。
最近はハッブル宇宙望遠鏡の登場で遠方にある銀河のセファイド変光星が観測 できるようになり、乙女座銀河団などにある銀河までの距離が正確に測られる ようになった。現在のところ、ハッブル宇宙望遠鏡によるセファイドの観測か ら得られたハッブル定数の値は、約 71 km/sec/Mpc である。 しかし、この方法も、変光星を識別できる距離に観測的な限界があり、その限 界はだいたい600万光年である。

Ia 型超新星

超新星爆発では急激に明るくなった後、だんだんと暗くなって行く。Ia 型と 呼ばれる超新星はその最も明るくなった時の絶対光度(真の明るさ)が(だいた い) 同じであるという観測的な事実が知られている。従って、Ia 型超新星爆 発の見かけの明るさを測ることができれば、その見かけの明るさと絶対光度か ら距離が分かる。実際に最も明るくなった瞬間を観測するのは難しいが、明る さの時間変化がどの Ia 型超新星も(だいたい)同じであるという観測的な経験 則を用いると、暗くなっていく様子を観測できれば最も明るかった時の見かけ の明るさを求めることができる。

Ia型超新星は銀河並の明るさになるため、比較的遠方まで観測することができ るが、それでも精度よく距離を求めるには6億光年程度が現在の限界である。 また、上の文章で()つきでだいたいと書いたが、これが曲者である。 絶対光度や、明るさの時間変化が異なる Ia 型超新星の報告もあるため、 まだまだ問題を含んでいる。 もちろん、理論的な(物理的な)裏付けがないこともあってセファイドに比べて 信頼性が低い。

タリー・フィッシャー関係、フェーバー・ジャクソン関係

セファイドで銀河までの距離が決まると、その銀河の見かけの明るさから 銀河の絶対光度を求める事ができる。 これまた経験則であるが、銀河の回転速度とその絶対光度の間にある関係が存 在している。渦巻銀河で見られるこの関係はタリー・フィッシャー関係、楕円 銀河で見られる関係はフェーバー・ジャクソン関係と呼ばれている(ただし楕 円銀河の場合は、回転しているというより星がランダムに動き回っているので、 その星のランダム運動の速度幅が用いられる)。

この関係を利用すれば、銀河の回転速度を測る事によってその絶対光度が求め られ、見かけの明るさと比較して距離を求める事が可能となる。 この方法では、銀河が明るいお蔭で 6億光年程度まで測る事ができる。 ただし、理論的な裏付けがまだ不十分なのと、回転速度--絶対光度関係が それほど綺麗な関係でない(ばらついている)こともあり、こちらもセファイド に比べると信頼度は低い。

距離梯子
遠方の銀河までの距離の測定には上で説明した方法を組み合わせて行われている。
  1. 視差で距離を求めて、主系列星の見かけの明るさから絶対光度をもとめ、絶対 光度--色関係を作る。
  2. 絶対光度--色関係を用いて更に遠くの星団までの距離を求める。
  3. その星団の中にあるセファイド変光星の見かけの明るさから絶対光度を求め、 周期--絶対光度関係を決める。
  1. さらにセファイドによって距離が決まった銀河に現れる Ia 型超新星を 観測してその絶対光度を求め、次により遠方の超新星までの距離を求める。
  2. もしくは、距離が決まった銀河の回転速度からタリー・ フィッシャー関係を求めてから、より遠方の銀河の回転速度を測定して距 離を決める。
この方法は複数の経験則を使って梯子を昇るようにして距離を決めていくこと から距離梯子といわれる。しかし、これを使ってもせいぜい、6億光年までし か測ることはできない、また、梯子の下の方の段で間違いがあると、そこから 先の結果は全て変わってしまう、さらに物理的な裏付けが希薄である、という 様々な問題を抱えている。
 
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